展示会で動画を流すと決めたあと、多くの担当者が時間を取られるのは動画の中身ではありません。
実際につまずくのは、その動画をどこに、どうやって流すのかという部分です。
会場の明るさ、出せる音量の上限、使える電力、そして申込の締切。
これらはすべて主催者が配る出展要項で決まっていて、動画が完成してから「条件に合わない」と分かっても、もう直せません。
せっかく数十万円をかけて作った映像が、当日は音を出せず、画面も見えづらく、電力が足りずに再生台数を減らす。
こうした事故は、動画の企画とブースの設計を別々に進めたときに起こります。
この記事では、展示会動画の尺と画面サイズをブースの配置から逆算する方法を軸に、会場条件の確認手順、費用相場、逆算した制作スケジュールまでを通してまとめました。
動画制作会社に依頼する前に決めておくべきことが分かる内容になっていますので、これから出展を控えている方はぜひ参考にしてください。
展示会で動画を流す前に決めておく3つのこと
動画制作会社に問い合わせる前に、出展する側で決めておくと話が早く進む項目が3つあります。
どれもブースの設計と同時に決まるもので、あとから変えると動画そのものの作り直しにつながります。

どこに立つ来場者に見せるのか
同じ商材の動画でも、見せる相手が立っている場所が変わると、必要な尺も画面サイズも変わります。
1小間のサイズは間口・奥行ともおよそ3,000mm、壁の高さは2,700mm程度です。
2024年9月に東京ビッグサイトで開催された展示会の出展マニュアルは、基礎小間の1小間を「間口:2,970㎜×奥行:2,970㎜×高さ:2,700㎜」(芯々の寸法)としています。
この3m四方のなかで、来場者が立つ位置は大きく3か所に分かれます。
通路を歩いている状態、ブースに一歩入って立ち止まった状態、そして商談席に座った状態です。
通路を歩いている来場者の視界に自社の画面が入る時間は、歩く速さから考えてせいぜい2〜3秒しかありません。
一方でブースの奥に入って立ち止まった来場者、あるいは椅子に座った来場者であれば、1分でも3分でも見てもらえます。
「誰に」ではなく「どこに立つ人に」で考えるのが、展示会動画の設計では実務的です。
来場者の業種や役職から考え始めると、伝えたい情報が増えていき、結果として通路からは何も読み取れない動画ができあがります。
音を出せる展示会なのかどうか
展示会の音量は、会場ではなく主催者が出展要項で上限を決めています。
商談を重視する展示会では、そもそも大きな音を出すこと自体が制限されます。
たとえばツーリズムEXPOジャパン2018の出展要項では、小間から発する音を小間の袖で測定して80デシベル以下に抑えるよう定めており、商談環境としては50デシベル以下を基準としています。
同要項には、出展事務局が音量計測器を持って巡回し、指導に従わない場合はパフォーマンスの中止を指示すると書かれています。
音を前提にナレーションを組んでしまうと、会場の騒音に埋もれて何も伝わりません。
音が使えるかどうかは演出の好みの問題ではなく、動画の構成そのものを左右する条件です。
使える電力がどれだけあるのか
モニターを置くには電力が必要で、その電力は無制限には使えません。
基礎小間には無料で使える電力が付いていますが、上限があります。
上限を超える場合は主催者への追加申込が必要で、その申込には会期の2か月前後という締切があります。
モニターの台数は電力の上限から決まるという順序を知らないまま画面を増やす計画を立てると、当日に台数を減らすことになります。
以上の3点は、いずれも動画制作会社では判断できません。
出展要項とブースの図面を並べて見られる立場の人が決める必要があり、ここがブース施工会社と動画を一緒に相談したほうが早い理由です。
なお小間のサイズや小間数の決め方そのものについては、「展示会ブースデザイン|1小間で成果を出す設計術」で詳しく解説しています。
展示会動画の種類と、それぞれの役割
展示会で使う動画は、置く場所と目的によって4種類に分かれます。
役割が違うので、1本の動画にすべてを詰め込むと、どの目的にも届かない映像になります。

| 種類 | 置く場所 | 尺の目安 | 目的 |
|---|---|---|---|
| 集客用 | 通路に向けた画面 | 15〜30秒 | 歩いている人の足を止める |
| 紹介用 | ブース内の壁面 | 1〜2分 | 立ち止まった人に商材を理解させる |
| クロージング用 | 商談席のタブレット | 1〜3分 | 導入事例で判断を後押しする |
| 代替用 | ブース内の大型画面 | 1〜3分 | 持ち込めない実物の代わりに見せる |
通路の来場者の足を止める集客用
通路側に向けた画面で流す、最も短い動画です。
歩いている人の視界に入る時間から逆算すると、冒頭の2〜3秒で商材が何なのかを見せる必要があります。
社名やキャッチコピーのカットから始めると、その2〜3秒を使い切ってしまいます。
製品が動いている場面、施工前と施工後の比較、数値の変化など、一目で違いが分かる素材を先頭に置きます。
ループ再生が前提になるため、終わりと始まりがつながる構成にしておくと、途中から見た人にも成立します。
ブース内で商品を説明する紹介用
ブースに入ってきた来場者に、商材の中身を理解してもらうための動画です。
スタッフが説明に回れないときの代わりになるため、説明の属人化を防ぐ効果があります。
説明できるスタッフが1人しかいない体制でも、動画があれば同時に複数の来場者へ同じ内容を届けられます。
仕組みの解説、導入の流れ、他の方式との違いなど、言葉だけでは伝わりにくい内容を映像に任せます。
立ったまま見る前提であれば、1分から2分が現実的な範囲です。
商談席で見せるクロージング用
商談席に座った相手に、タブレットやノートパソコンで見せる動画です。
導入事例や利用者の声のように、営業担当者が自分の口で言うと押しつけに聞こえる内容を、第三者の言葉として見せられます。
座って見るので3分程度でも成立しますが、商談の持ち時間を奪わない長さに抑えます。
会期後の訪問営業でもそのまま使えるため、二次利用しやすい種類でもあります。
会場に持ち込めない大型設備を見せる代替用
展示会ブースは小間単位で区切られた狭い空間なので、実物を持ち込めない商材があります。
大型の製造設備、建設機械、施工済みの現場、工場のラインなどが典型です。
こうした商材では動画が実物の代わりになるため、映像の出来がそのまま出展の成果に響きます。
搬入できない大きさのものを扱っている場合は、装飾の作り込みよりも映像に予算を寄せる判断もあり得ます。
1本で兼ねるか、役割ごとに分けるか
予算が限られている場合、1本の動画を短く切り出して複数の用途に使う方法があります。
たとえば2分の紹介用動画を作り、その冒頭20秒を集客用として切り出す形です。
このときは、最初から切り出しを前提に構成を組んでおくことが条件になります。
完成した動画をあとから短く切ると、話の途中で終わる不自然な映像になりがちです。
制作会社への依頼時に「集客用として20秒版も欲しい」と伝えておけば、撮影や編集を共通化できるため、2本を別々に発注するより費用を抑えられます。
動画の尺と画面サイズは、ブースのどこに置くかで決まる
尺と画面サイズは、好みで決める項目ではありません。
画面を置く位置と、そこから来場者までの距離で自動的に絞られます。
通路側の画面は15〜30秒で組む
通路に向けた画面は、歩いている来場者に見られる時間から尺を決めます。
大人が普通に歩く速さはおよそ秒速1m前後なので、1小間の間口3,000mmの前を通り過ぎるまでに3秒ほどしかかかりません。
つまり、通路側の画面に流す映像は「2〜3秒でつかんで、足を止めた人に15〜30秒で概要を伝える」という二段構えになります。
歩いている人が視界に入れる時間から逆算する
冒頭の2〜3秒で必要なのは、商材のカテゴリーが分かることです。
「機械なのか、サービスなのか、素材なのか」が分かれば、関係のある来場者は足を止めます。
逆に、関係のない来場者を止めても商談にはつながらないため、あえて対象を絞る情報を先頭に出すほうが効率が上がります。
ループ再生を前提に始まりと終わりをつなぐ
通路側の画面は、来場者がどの瞬間から見るか分かりません。
そのため、終わりのカットと始まりのカットが自然につながる作りにしておきます。
最後に社名とロゴを大きく出して暗転する構成は、途中から見た人にとっては「何の動画か分からないまま終わった」という体験になります。
ブース奥の画面は1〜3分まで伸ばせる
ブースの奥に置いた画面は、立ち止まった来場者が対象になるため、尺を伸ばせます。
ただし伸ばせる条件は、立ち止まれるスペースが小間の中にあることです。
立ち止まれる滞留スペースを確保する
画面の前に人が並んで立つと、1人あたり奥行500mm前後は必要になります。
1小間の奥行3,000mmのうち、カウンターや展示台で1,500mmを使っていると、残りは1,500mmです。
ここに滞留スペースを取れるかどうかで、1分を超える動画が成立するかが決まります。
通路にはみ出して人が滞留すると、主催者から通路整理の指示が入る展示会もあります。
椅子を置くなら3分以上も成立する
椅子とテーブルを置いて座って見せる形にすれば、3分以上の動画も見てもらえます。
ただし1小間で商談席を作ると、展示できる製品の数が減ります。
商談席と展示スペースはトレードオフなので、出展の目的がリード獲得なのか商談なのかを先に決める必要があります。
読ませたい距離から文字の大きさを決める
画面サイズを先に決めても、文字が読めるかどうかは決まりません。
読めるかどうかを左右するのは画面の大きさではなく、画面に表示される文字そのものの高さだからです。
デジタルサイネージの分野では、必要な文字の高さを視認距離から逆算する目安が使われています。
デジタルサイネージ呉は「文字の縦サイズ(cm)=画面までの距離(cm)÷250」という式を示しています。
これは視認距離1mにつき文字の高さ約4mmという計算です。ただし会場は明るく人も多いので、屋内で確実に読ませるなら視認距離1mあたり10mm程度を見ておくと安全側に寄せられるでしょう。
| 読ませたい距離 | 必要な文字の高さの目安 |
|---|---|
| 2m | 20mm以上 |
| 3m | 30mm以上 |
| 5m | 50mm以上 |
| 10m | 100mm以上 |
1小間の奥行は3,000mmなので、ブースの奥に置いた画面を通路の手前から読ませたい場合、視認距離は4〜5m程度になります。
このとき必要な文字の高さは40〜50mmで、55インチの画面(画面の高さ約68cm)であれば画面の高さの約15分の1にあたります。
パソコンの編集画面では過剰に大きく見える大きさでしょう。しかし会場では、これでようやく読める水準です。
画面を大きくしても、文字の高さを画面サイズに比例して大きくしなければ読める距離は伸びません。
縦型モニターが有利になる場面
通路側に向ける画面は、横型より縦型が有利になる場面があります。
1小間の間口3,000mmのうち、壁面をすべて画面に使えるわけではありません。横幅を取らない縦型のほうが、収まりがよいこともあるでしょう。
また、縦型は人の立ち姿と相性がよいため、人物が登場する映像では視線が集まりやすいという利点もあります。
一方で、機械の全体像や図面のように横に広い被写体は、縦型に収めると小さくなってしまいます。
被写体の形で決めるのが判断しやすいでしょう。迷う場合は横型を選んでおくと、二次利用の幅が広がります。
会場は明るく、音が使えない前提で設計する
展示会場は、オフィスや会議室とは光と音の条件がまったく違います。
自社のモニターで確認して問題なかった映像が、会場では読めない。この事故の原因はここにあります。

会場の照明照度は400ルクス程度
会場の明るさは、出展要項に書かれている場合があります。
ツーリズムEXPOジャパン2018の出展要項には「会場の照明照度は400ルクス程度ですので、照明器具の取り付けをお勧めします」と記載されています。
FOODEX JAPANの出展マニュアルは「展示場の一般天井照明の平均照度は500ルクスです」としており、会場や展示会によって400〜500ルクス程度と考えておけばよいことになります。
これは一般的なオフィスの照度とほぼ同じ水準です。
つまり会場は決して暗くはなく、画面の映像は明るい環境で見られることになります。
暗い部屋で作った映像をそのまま持ち込むと、コントラストが足りずに眠い画面になります。
対策は2つあります。
- 映像そのもののコントラストを上げ、文字と背景の明度差を大きく取る
- モニターの輝度が足りる機種を選び、画面に照明が映り込まない向きに設置する
とくに映り込みは見落としやすく、ブースのスポットライトが画面に反射して何も見えなくなることがあります。
照明の選び方と配置は「展示会ブースの照明選びと効果的な演出方法を解説」でまとめていますので、あわせて確認してください。
音に頼らず伝わる画面を作る
会場の騒音のなかでは、ナレーションはほぼ聞き取れません。
音が出せる展示会であっても、音声なしで内容が完結する設計にしておくのが前提です。
テロップは離れた位置から読める大きさにする
前述のとおり、必要な文字の高さは読ませたい距離から決まります。
通路の反対側から読ませたいなら視認距離は5m前後になるため、文字の高さは50mm以上を見ておきます。
画面のなかで見ると大きすぎるように感じますが、会場ではこのくらいでようやく読めます。
1画面に入れる文字数は、20文字前後を上限にすると破綻しません。
冒頭の数秒で商材が何かを見せる
音がない状態では、最初に出る映像だけが情報源になります。
製品の全体像、稼働している様子、使っている場面のいずれかを冒頭に置きます。
抽象的なイメージ映像や、社名のロゴアニメーションから始める構成は、音がない環境では意味を持ちません。
スピーカーを使うなら小間袖での音量を測る
音を出す場合は、測定される位置を理解しておく必要があります。
前述の出展要項では「小間から発するあらゆる音は、小間袖から測定し、80デシベル以下になるように徹底してください」と定められています。
小間袖とは、自社の小間と隣の小間の境界にあたる位置です。
つまり画面の正面で測るのではなく、隣のブースに届く音の大きさで判定されます。
スピーカーを通路側に向けて置くと、境界での音が大きくなりやすいので、指向性の狭いスピーカーを内側に向ける配置が無難です。
規定は展示会ごとに異なるため、出展要項が届いた時点で音量の項目を必ず確認してください。
出展要項で決まる制約を、動画の企画前に確認する
ここまで触れてきた音量や電力の条件は、すべて主催者が配る出展要項に書かれています。
出展要項は会期の3〜4か月前に届くことが多く、申込の締切は会期の2か月前後に設定されています。
動画の企画をこの締切より後に始めると、条件に合わせられません。

音量の上限は主催者が決めている
音量の規定は会場ではなく展示会ごとに決まるため、同じ東京ビッグサイトでも展示会によって条件が変わります。
実際の出展マニュアルを3つ並べると、上限値も測定位置もそろっていないことが分かります。
| 出典 | 上限 | 測定位置 |
|---|---|---|
| 2024年9月に東京ビッグサイトで開催された展示会の出展マニュアル(2024年9月開催) | 70デシベル以内 | 通路の中央部分/隣接・背接する小間との境界部分 |
| FOODEX JAPANの出展マニュアル(2022年開催) | 70デシベル以下 | ブース前面2m |
| ツーリズムEXPOジャパン2018の出展要項(2018年開催) | 80デシベル以下(生演奏を含む) | 小間袖 |
2024年のマニュアルは「拡声器、ビデオ、映写機などを使う場合の音量」として規定しており、動画の音がそのまま対象になると明記しています。
あわせて「スピーカーは自社小間内に向けて設置してください」「70デシベル以内でも、周囲に影響がある場合には事務局よりお声がけのうえ、対策をお願いする場合があります」とも書かれています。
2018年の要項では商談環境として50デシベル以下を基準とし、出展事務局が音量計測器を持って巡回して指導することがあるとされていました。
音量は「出せる・出せない」の二択ではなく、上限値と測定位置がセットで決まるという点を押さえておいてください。
電力が付いてくるかどうかは展示会によって違う
まず確認すべきなのは、基礎小間に電力が付いてくるのかどうかです。
ここも展示会によって扱いがはっきり分かれます。
| 出典 | 基礎小間に付く電力 |
|---|---|
| 2024年9月に東京ビッグサイトで開催された展示会の出展マニュアル(2024年) | 「基礎小間には、展示用照明・電源はありませんのでご注意ください」 |
| FOODEX JAPANの出展マニュアル(2022年) | 1ブースにつき交流単相100V・300Wまでの一次側電気工事を事務局が実施 |
| ツーリズムEXPOジャパン2018の出展要項(2018年) | 1小間につき2口コンセント1個(100V500Wまで)または無料電力送電100V500Wが付帯。照明器具は含まれない |
「基礎小間なら電源が付いている」と思い込むと、当日モニターが点きません。
2018年の要項では、4小間以上のスペース渡しについて「無料送電電力供給はありません」とされていました。
モニター・プレーヤー・照明の合計で考える
付いてくる場合でも、その枠はモニターだけで使い切れる数字ではありません。
ただし実際には、再生用のパソコンやメディアプレーヤー、そしてスポットライトも同じ枠から電力を取ります。
機器ごとの定格消費電力を仕様書から拾って合計するのが、確実な確認方法です。
カタログの「消費電力」欄は機種によって最大値と標準値のどちらかが書かれているため、迷う場合は大きいほうで計算しておきます。
2018年の要項はスポットライトの目安を基礎小間1小間につき3〜6灯としており、照明にも電力が必要なことが分かります。
超えるときは1kW単位で追加申込になる
必要な電力は、1kW単位で申し込むのが一般的です。
2024年9月に東京ビッグサイトで開催された展示会の出展マニュアルでは、幹線工事費が100V・200Vとも1kWにつき9,900円(税込)、電気使用料金が1kWにつき2,750円(税込)とされていました。
同マニュアルには「申込総量が500W以内の場合のみ4,950円」という小口の区分もあり、小さな画面1台なら負担を抑えられます。
2018年の要項では「電力の供給単位は1kWごとになります。小数点以下は全て切り上げ計算になります」とされ、2.3kWが必要な場合は3kWの申込になると例示されていました。
金額は展示会ごとに、また年度ごとに変わりますので、必ず最新の出展要項で確認してください。
一次側は主催者、二次側は出展者の工事
電気工事は、責任の分かれ目があります。
前述の出展要項では、供給幹線の工事は申込容量に基づいて主催者が行い、「主催者が設置した開閉器またはコンセントからあとの電気工事(小間内配電盤等)はすべて出展者側で行ってください」と定められていました。
つまりモニターまで電気を引く配線は、出展者が手配する範囲です。
この二次側の工事は、ブースの施工とまとめて発注するのが一般的で、ブースの図面に配線の経路を書き込んでおく必要があります。
画面の位置を決めないまま施工に入ると、配線が見えるところを通ったり、延長コードが床を横切ったりします。
なお同要項では、各ホール内や共有部の壁面コンセントの利用は禁止とされていました。
「足りなければ会場のコンセントを借りる」という運用はできません。
申込の締切は会期の約2か月前
締切は想像より早い時期に来ます。
2024年9月18日開幕の展示会では、電気工事と電気備品の届出書の提出期限が8月2日に設定されていました。
2018年9月20日開幕の展示会でも、電気供給工事の申込書の提出期限は7月31日で、「使用の有無に関わらず、全出展者提出」と明記されています。
この日程から逆算すると、モニターの台数と設置位置は会期の2か月前には固まっている必要があると分かります。
動画の尺や構成はあとから調整できますが、電力の申込はやり直せません。
展示会動画の費用相場と、何にお金がかかるのか
費用は表現手法と撮影の有無で大きく変わります。
制作会社が公表している相場を並べると、おおよその幅が見えてきます。

表現手法ごとの費用の目安
各社が公開している相場をそのまま並べると、次のようになります。同じ表現手法でも会社によって示す幅が違うため、1社の数字だけで判断しないでください。
| 表現手法 | 費用の目安 | 出典 |
|---|---|---|
| アニメーション | 50万〜100万円(自社保有のイラストを使う場合) | Crevo |
| アニメーション | 30万〜320万円 | CINEMATO |
| 実写 | 50万〜100万円 | Crevo |
| 実写 | 30万〜200万円 | CINEMATO |
| 3DCGを使う場合 | 100万〜300万円 | Crevo |
| 既存素材を使った簡易制作 | 20万〜40万円 | FRIGG ENTERPRISE |
※いずれも各社が2026年9月時点で公表している目安です。
数字の幅がこれほど広いのは、撮影日数と登場人物の数で費用が大きく動くためです。CINEMATOは近年のボリュームゾーンを100万〜150万円程度としています。
工場やオフィスで1日撮影する場合と、複数拠点を回る場合では、同じ実写でも費用が倍近く変わります。
費用が上がる要因と下がる要因
見積もりを比べるときは、次の項目が入っているかどうかを確認します。
- 撮影日数と撮影場所の数
- 出演者を手配するか、社員が出るか
- ナレーターを起用するか、テロップだけにするか
- 3DCGやモーショングラフィックスの作り込みの度合い
- 修正の回数が何回まで含まれているか
このうち、費用を最も動かしやすいのは撮影日数です。
複数の製品を撮る場合、撮影日を1日にまとめられるよう段取りを組むだけで金額が変わります。
逆に、修正回数の上限が低い見積もりは、社内の確認体制が固まっていないと追加費用につながります。
動画の費用だけでは完結しない
見落としやすいのが、動画そのもの以外にかかる費用です。
モニター・プレーヤーの手配費
モニターは購入かレンタルのどちらかで用意します。
会期の数日間だけ使うのであればレンタルが現実的で、ブース施工とまとめて手配すれば搬入と設置も同時に済みます。
画面を壁面に埋め込む場合は、モニターの外寸を確定させてから造作を作るため、機種の決定がブース施工の日程に影響します。
電力の追加申込にかかる費用
前述のとおり、無料分を超える電力は1kW単位で費用がかかります。
モニターを複数台置く計画であれば、この費用を最初から予算に入れておきます。
展示会ブース全体の費用の内訳については「展示会ブースの費用相場と内訳|コスト削減のコツ」で解説していますので、予算を組む段階で確認してください。
予算を抑えるための現実的な方法
削るなら、品質に響きにくい順に削ります。
- 既存の製品写真やカタログのデータを提供して、撮影の範囲を狭める
- ナレーションをやめてテロップだけにする
- 1本の長い動画を作り、そこから短い版を切り出す前提で構成する
- 出演を社員で済ませる
反対に、削ってはいけないのは構成の設計です。
構成が甘いまま映像の見栄えだけを整えても、通路で足は止まりません。
制作から当日までのスケジュール
動画とブースを別々のスケジュールで動かすと、どちらかの決定を待つ時間が発生しやすくなります。
とくに電力の申込は会期の2か月前後という動かせない締切があるため、そこを起点に全体を組み立てるのが確実です。

逆算すると着手は会期の3か月前
制作会社が公表している制作期間は、おおむね1.5か月から2か月です。
key-movieは1.5〜2か月を推奨期間として示し、FRIGG ENTERPRISEは展示会の3か月前からの着手を勧めたうえで、2か月でもシンプルな構成なら可能だが修正の余裕がなくなるとしています。
ここに電力申込の締切が重なるため、動画の企画だけを2か月前に始めても、機器の消費電力が確定せず申込に間に合いません。
実務的には、ブースの大枠と画面の位置を先に決め、そこから動画の構成と機種選定を並行させる流れになります。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 会期の3か月前 | ブースの大枠を決め、画面の位置と台数を仮決めしたうえで制作会社への相談を始める |
| 会期の2.5か月前 | モニターの機種を決めて定格消費電力を合計し、動画の構成と尺を確定する |
| 会期の2か月前 | 電力の申込を提出する。撮影が必要な動画はこの時期までに撮影を終える |
| 会期の1か月前 | 初稿を確認して修正を入れ、あわせてブースの施工図を確定させる |
| 会期の2週間前 | 動画を納品してもらい、実際に使うモニターとプレーヤーで再生テストを行う |
| 設営日 | 現地で画面の位置と明るさを確認し、必要に応じて高さと向きを調整する |
この表のなかで最も動かせないのは「会期の2か月前」の行で、電力の申込が締切を過ぎるとモニターの台数を減らすしかなくなります。
出展要項が届いてから動くと間に合わない項目
出展要項が届くのは会期の3〜4か月前ですが、届いてから動き出すと間に合わない項目が3つあります。
1つ目は撮影が必要な動画で、工場や施工現場の撮影は天候と稼働状況によって日程が動くため、予備日を含めて2週間程度の余裕が必要です。
2つ目は壁面に画面を埋め込む造作で、モニターの外寸が決まらないと開口部の寸法を図面に落とせません。
3つ目は出演者の手配で、社員が出演する場合であっても撮影日の業務調整に時間がかかります。
反対に、テロップの文言や色の調整、BGMの差し替えは納品直前でも対応できる範囲です。
日程が動きにくいものから先に確定させるという順序を守るだけで、直前の駆け込みを避けられます。
会期前に必ずやる現地条件の確認
設営日にできることは限られていますが、次の2つは必ず現地で確認してください。
1つ目は、ブースのスポットライトが画面に映り込んでいないかどうかです。
照明の角度によって画面が白く飛び、正面からは何も読めなくなることがあるため、照明を点けた状態で画面の前に立って確かめます。
2つ目は、実際に通路を歩いてみて、想定した距離からテロップが読めるかどうかです。
自分の足で歩いて確認すると、編集画面では十分だった文字が会場では小さすぎるという問題がその場で分かります。
設営日に文字の大きさを変えることはできませんが、画面の高さを下げる、向きを通路側に振る、照明の角度を変えるといった調整なら当日でも可能です。
展示会が終わったあとに動画を使い切る
展示会用に作った動画は、会期の3日間で使い終わるものではありません。
二次利用まで設計しておけば、1本あたりの実質的な費用は下がり、次回の出展でも作り直しが不要になります。

自社サイトと営業資料に載せる
最も手間がかからない二次利用が、自社サイトへの掲載です。
製品ページやサービスページに動画を置いておけば、展示会に来なかった見込み客にも、会場と同じ説明がそのまま届きます。
営業担当者がタブレットで見せる資料としても使えるため、説明の内容と品質を担当者によらず揃える効果があります。
会期後に送るお礼メールへ動画のURLを載せておくと、名刺交換しただけで話を聞けなかった相手にも内容を届けられます。
ブースで流した映像と同じものを見せることで、「あのブースの会社だ」と記憶を呼び起こす役割も果たします。
次の展示会で使い回すための作り方
同じ動画を翌年以降も使うなら、制作の段階で3つの条件を付けておきます。
1つ目は、展示会の名称や開催年を映像のなかに入れないことです。
2つ目は、ブースの写真や映像を使う場合、その年のブースだと特定できるカットを本編に入れないことです。
3つ目は、期間限定のキャンペーンや価格の情報を本編に混ぜず、差し替えできる別カットとして分けて納品してもらうことです。
この3点を守るだけで、翌年も差し替えなしでそのまま使える動画になります。
反対に「〇〇展2026出展記念」のようなテロップを本編に入れてしまうと、その年の会期が終わった時点で使えなくなります。
素材を分けて納品してもらう
納品を受けるときは、完成データだけでなく制作の途中の素材も受け取っておきます。
具体的には、撮影した元の映像データ、テロップを入れる前の状態の映像、ナレーションの音声データ、使用した図やイラストのファイルです。
これらが手元にあると、翌年の修正を別の会社へ依頼することもできるようになり、価格と納期の両方で交渉の余地が生まれます。
ただし素材の受け渡しと利用範囲は契約の条件になるため、見積もりを取る段階で「素材データの納品は含まれるか」を必ず確認してください。
素材の受け渡しに追加費用がかかる会社もありますが、翌年の修正費と比べれば回収できる金額に収まることが多いです。
なお、納品されたデータは容量が大きくなるため、社内のどこに保管して誰が管理するかを決めておかないと、担当者が変わった時点で行方が分からなくなります。
動画は一度作れば数年使える資産なので、保管場所と管理者をあわせて決めておいてください。
よくある失敗と、その回避策
最後に、展示会の現場で実際に起きている失敗を4つまとめます。
いずれも動画そのものの品質ではなく、決める順番を間違えたことが原因で起きています。

完成した動画が会場で見えない
社内のモニターで確認したときは問題なかった映像が、会場に持ち込むと読めないという失敗です。
原因は2つあり、1つは会場の照度が400ルクス程度あって画面のコントラストが相対的に落ちること、もう1つはブースのスポットライトが画面に映り込むことです。
回避策は、編集の途中で一度、窓際や照明の下など明るい場所にモニターを置き、4mほど離れた位置からテロップが読めるかを確かめておくことです。
映り込みについては、画面と照明を同じ向きに並べず、照明を画面の側面や背後から当てる配置にすると避けられます。
尺が長すぎて誰も最後まで見ない
3分の動画を通路側の画面で流し、誰も立ち止まらないまま会期が終わるという失敗です。
通路側は15〜30秒、ブース内は1〜2分という切り分けができていないと、どの画面でも同じ長編を流すことになります。
回避策は、画面ごとに流す動画を分けることですが、予算の都合で1本しか作れない場合もあります。
その場合は、冒頭の20秒だけで商材の概要が完結する構成にしておけば、通路側の画面としても成立します。
長い動画の途中から見た来場者は、何の話をしているのか分からないまま通り過ぎてしまいます。
電力が足りず当日に機材を減らす
申込んだ電力が足りず、設営日にモニターを1台外すことになるという失敗です。
基礎小間の無料電力が100V500W程度であることを知らないまま、モニターを3台置く計画を立てると起こります。
回避策は、機種を決めた段階でモニター・再生機器・照明の定格消費電力を合計し、照明の分も含めた容量で申込を出すことです。
申込は1kW単位で小数点以下が切り上げられるため、迷ったときは1段上の容量で申し込んでおくほうが安全です。
ブース設計が終わったあとに動画を発注する
施工図が確定してから動画を発注し、画面の位置と映像の向きが合わないという失敗です。
縦型の映像を作ったのに横型のモニターしか設置できない、画面を埋め込む予定だった壁に十分な奥行がない、配線の経路が確保できず延長コードが床を横切るといったことが起きます。
回避策は、ブースの大枠を決める段階で動画の話を同時に始めることで、画面の位置と台数だけでも先に決めておけばあとの工程はかみ合います。
ブース全体のレイアウトの考え方は「展示会ブースレイアウト完全ガイド|集客のコツと事例」で解説していますので、画面の位置を検討する前に目を通しておくと判断が早くなります。
展示会の動画とブースは、まとめて相談したほうが早い
ここまで見てきたとおり、展示会動画の条件はそのほとんどがブース側の条件から決まります。
画面の位置、通路からの視距離、立ち止まれる滞留スペース、配線の経路、そして申込む電力の容量。
これらはいずれも、ブースの図面を引く人でなければ判断できない項目です。

ブース設計と同時に決められること
動画とブースを同じ相手に相談すると、次の項目が一度の打ち合わせで決まります。
- 画面をどの壁面に置き、通路からの視距離を何メートル取るか
- 壁面に埋め込む造作にするのか、スタンドで据え置くのか
- 二次側の配線をどこに通し、コードを見せない納まりにするか
- 申込に必要な電力の容量をいくらにするか
- 滞留スペースを確保したうえで、展示台やカウンターをどこまで置けるか
これらを動画制作会社とブース施工会社に別々に相談すると、確認が往復するたびに数日ずつ時間が溶けていきます。
モニターの外寸が決まらないと造作の図面が引けず、造作が決まらないと画面の位置が決まらない、という待ち合いが起きるためです。
同じ場で決めてしまえば、電力の申込期限に間に合わせやすくなり、図面の修正も1回で済みます。
とくに画面を壁面に埋め込む場合は、モニターの外寸に合わせて開口部の寸法と下地の位置を決める必要があるため、機種の決定と造作の設計を切り離せません。
配線についても、二次側の工事はブースの施工と同じ範囲になるので、電気の経路を施工図に書き込んでおけば当日の延長コードを避けられます。
株式会社スリービーに相談できること
スリービーは、展示会ブースのデザインから施工までを一貫して手がけています。
あわせて動画制作とVR制作も手がけているため、ブースの図面と映像の仕様を同じ打ち合わせのなかで決められます。
2〜8小間を中心に、30小間以上の大型ブースまで対応しており、東京ビッグサイトや幕張メッセ、インテックス大阪など全国の会場で施工実績があります。
「他社に断られた案件、お任せください」という考え方で、納期や条件の厳しい案件についても一緒に解決策を探しています。
はじめて出展する場合でも、出展要項の読み方から画面の位置の決め方まで一緒に整理していきますので、動画の仕様が固まっていない段階でご相談いただいて問題ありません。
ブースの図面がまだ無い状態が、いちばん相談しやすいタイミングです。
ブースと動画をまとめて相談したい方は、下記のフォームからお問い合わせください。
まとめ

最後に、記事の内容を振り返っておきましょう。
- 展示会動画の尺と画面サイズは、好みではなく画面を置く位置と来場者までの視距離で決まる
- 通路側は15〜30秒、ブース内は1〜2分、商談席は1〜3分が現実的な範囲
- 文字が読めるかは画面サイズではなく文字の高さで決まる。視認距離1mあたり10mmを目安にする
- 会場の照度は400ルクス程度あり、音は騒音に埋もれるため、音声なしで内容が完結する設計が前提になる
- 音量の上限と電力の容量は主催者の出展要項で決まり、電力の申込締切は会期の約2か月前に来る
- 基礎小間の無料電力は100V500W程度が目安で、モニター・再生機器・照明の合計で考える
- 費用相場はアニメーションが30万〜100万円、実写が50万〜100万円、簡易制作が20万〜40万円
- 動画の制作費以外に、モニターの手配費と電力の追加申込にかかる費用がある
- 逆算すると着手は会期の3か月前。撮影と造作は日程が動きにくいので先に確定させる
- 展示会名や開催年を映像に入れなければ、翌年もそのまま使い回せる
展示会で動画が成果につながるのは、来場者が立っている場所と画面の条件がかみ合ったときだけです。
どれだけ作り込んだ映像でも、通路から文字が読めなければ足は止まらず、電力が足りなければ画面は点きません。
動画の中身を考える前に、どこに置いて、誰に、どれだけの時間見せるのかを決めてください。
この順番を守るだけで、同じ予算でも会期中に生まれる商談の数は変わってきます。
ブースの設計と動画の企画を同時に進めて、次回の出展を確実な成果につなげていただければ幸いです。

